【LA LA LAND】夢を叶える、ただそれだけ
観賞後に感じた最初の感情は『辛い』。
この言い難い辛さを誰かも感じていないかと思って、珍しくすぐに感想をぐぐってしまいました。
Another Day of Sunを歌うハイウェイのシーンは公開前からよく流れてきていたのを見ていたけど、まさかあれで始まると思ってなかったので驚きました。
L.A.には2度行ったことがあるけど、あのどこまでも広がる大地の中にどこまでも続くハイウェイを思い出してすごく懐かしくなった。
L.A.は本当に大好きな場所。特別な時間を過ごしました。
映画本編は本当に予想していないラストで、終わったときは少し脳の処理追い付いてなかった。
そこからじわじわ、ゆっくり、液体が浸透していくようなスピードで感情が起き上がってくる。
この映画のストーリーは"夢を叶える"。それに尽きる。
思い描く夢、叶えたい夢は人それぞれで、その先に待つ幸せの形も人それぞれ。
二人はそれぞれの夢を叶えた、それは歴とした事実。
それでも、セブが最後に思い描いたあのフラッシュバックが、現実だったら良かったのにと思ってしまうのはきっと自分の心がまだ幼い証拠だなぁと思う。
ミアのことを少し。
オーディションを受けては落ち、ようやく一次試験を通過したと喜んだ矢先、二次では相手にもされず嘆く。コネクションが必要だと同居している友人が言う。招待状はあると歌う。
会場に行って、繋がりを持とうとするミア。ここでもなかなか上手くいかない。
セブは、レストランでBGMを演奏する。クリスマスの夜。支配人の言うことを聞きながらも、自分の求める音楽の表現に指が走る。
我に帰るも支配人からクビを宣告され、声をかけるミアのことも無視して店を出る。
セブとセブの姉との会話から察するに、セブは自分の音楽-ジャズ-を突き詰めて、恋愛は後回しにしているようだった。一方では、音楽のこととなると店への執着もすごい。家でもピアノを弾くシーンが何度も出てくる。
ミアはどうだろう。セブに脚本を勧められた後は自宅やカフェで仕事をするシーンが出てくるが、それまでは、車の中で受けるオーディションの台本を読むシーンがあったくらい。
セブと違って恋人もいる。それでも、フランスに住む叔母とのエピソードや、実家の自室が映るシーンから、女優に憧れ続けているのは紛れもない事実。
夢に対して熱量に差があるわけではない。
セブは、店を開くため、そしてミアを安心させるため、バンドに加わった。
ミアは、一人舞台が失敗したとき、これ以上辱しめは受けられない、と泣きながら実家に帰った。
二人の違いが一番、如実に出ているのはここだと、個人としては思う。
セブは夢を叶えるための才能を、その知識、努力、時には自己犠牲で補った。
ミアは、才能を持っていた。補う必要もないくらいの才能を。
有名ディレクターに目をつけられる、それだけが、彼女が夢を叶えるために欠けていたこと。
才能があったから、一人舞台の演技を評価されオーディションに呼ばれたし、才能があったから、アドリブの演技を認められた。
二人はラストで結ばれなかったけど、お互いの人生において二人の出会いはかけがえのないものだった。
セブと出会って、彼がすすめていなかったら、ミアは脚本を書かなかったかもしれない。一人舞台もせず、オーディションだけを受け続けて、落ち続けて、実家に帰っていたかもしれない。
ミアと出会って、ミアと彼女の親との会話を聞いていなかったら、安定を求めてバンドに参加していなかったかもしれない。
預金は増えず店を持てなかったかもしれない。
彼女が考えてくれた店の名前も、あのネオンの看板も、生まれないまま終わっていたかもしれない。
夢を叶えるために必要な出会いだった、例えそれが結ばれなくても。
セブが最後、ピアノから顔をあげて、ミアに向けて笑顔を見せてくれたこと。
すべてが集結した表情で、救われました。
幼い頃、夢を問われると色々な答えをしてた。私の答えの9割はスーパーヒーローになりたい、だったけど。
テレビで見たのか実際に誰か言っていたのか覚えていないけど、「お嫁さんになりたい」という答えがあったな。幼心に違和感MAXだった。
お嫁さんになる=誰かと結婚する、誰かって誰だよ?
不特定多数でも、そうでなくても、"誰か"がいないと成り立ち続けない夢は夢ではないのかな、と今回思った。
自分の夢は自分だけのものだ。それを叶えられたらどれだけ豊かな時間を過ごせるだろうなぁ。