爽やかな風

いたりいなかったりします

【The Greatest Showman】アンバランスな傑作

公開日にIMAX2Dで鑑賞。

(IMAX2Dって大好き。DOLBYも好き)

楽曲制作チームは昨年ヒットしたララランドのスタッフときいて期待大。

何よりZac EfronとZENDAYAというディズニーチャンネル育ちの自分にはたまらない共演、、

それはそれは素敵な映画なんだろうな…とわくわくして劇場へ。(思えばこの時点で若干ハードルとやらを上げすぎていたのかもしれない)

 

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見終わったとき、拍手しそうになった(してる人ちらほらいた)

映画を見ていたのをすっかり忘れて、舞台を鑑賞してる気持ちになってた。

ミュージカル映画を見た!というより、ミュージカルを見た!というきもち。

素晴らしい楽曲たちに心奪われた一方で、わだかまりが残ったのも事実。

 

何がもやもやの原因なのか、しばらくの間上手く表現できなかった。

音楽をきけば映像が容易く脳裏に浮かぶ。もう一度観たい!と思うのに、人に感想を聞かれても、すごくよかった!とリコメンド出来ないこの感情は一体なんだ?

とりあえずもう一度観れば何か変わるんじゃないか?と2週間も空けずに二度目の鑑賞。

そこでいろいろ発見もあり、わだかまりが無くなるというよりは腑に落ちた部分が出てきたので、踏まえて整理するためにこれを書く。

  

  • バーナムと他者と私のズレ

 

タイトルにもなっているGreatestなShowmanことバーナムが主人公。

実在の人物がモデルになってはいるけれど、ストーリーに基づく史実はあまり確認出来ない。

貧しい暮らしのなかでも幼い頃から持っていた想像力を失くさないバーナムは、仕立てのお客さんの娘に恋し、文通で一心に愛を育みまして、めでたく結ばれる。

恋人の両親の反対を乗り越えて?押し切って?いざ結婚!あっという間に二児の父!

2人がアパルトマンの屋上で踊るシーン、すごく良い〜〜

 

幸せの渦中かと思いきや会社が倒産。そこからショーマンの人生へ踏み出すわけです。

 

さてショーマンとしてのバーナムの腕前は?

娘たちのアドバイスなどもあり、フリークス(奇形な人)たちを集めれば客が入るんじゃないか?というアイデアが浮かび早速行動。 

 オーディションを経て色々な種類のフリークスが集まりました……

 

まずここで、え?もしや見世物扱い?という、バーナムと私の間にズレが生じる。

でもまだ、彼ら(フリークス)に「必ず愛される」「誰も笑ったりしない」と自信たっぷりに伝えるバーナムは、部下を守る良き経営者にも映る。

ここでひとつ思い出すシーンが、millions dreamのワンシーン。

父親を亡くしたバーナムは更に貧しくなりパンを盗む。すぐに捕まりパンは没収。呆然としているところに、風変わりな老婆が来て林檎を差し出して去っていく…

こういった経験からバーナムにはフリークスに対しての『偏見』が無かったのでは?

「ヒトではなくコトで判断しなさい」なんてセリフも聞いたことある。俗に言う「人は見かけによらない」というやつ。

 

バーナムは、バーナム自身は、フリークスに偏見がなかった。

けれど、自分以外の大多数はフリークスを面白がって見る人たちだということも分かっていた。

フリークスたちを貶めようとしたわけではないけれど、非常にビジネス色が強い関わりの持ち方故、ちょっと抵抗感が出てしまう。

 

  • リンドとの出会いと過ち

 

もうひとつ、バーナムに疑問を持ったのはリンドとの出会いのあと。

欧州で名声を既に得ていたリンドと出会ったバーナム。ぜひアメリカでも公演を…と持ちかける。

ここからバーナムの過ちシーズン到来なわけだが…そもそも、どうしてリンドに声をかけたのか?

 

バーナムはこの時すでにイマジネーション溢れるショーマンとして一定の活躍はしていましたが、フィリップをスカウトしたように上流社会の人間をターゲティングしていた。

それはまたなぜか。

生い立ちへのコンプレックスに感じて仕方ない。

妻であるチャリティの父親には、裕福な家のものではないことで冷ややかな態度をとられ続けていたし、父を亡くし1人で生きてきて、人との関わり合いのなかで満たされない何かがあったのではないか?

娘がバレエの仲間たちに蔑まれるシーンもあったな、あれは反骨心に火つくよ。。

 

妻子がいる、家族がいる今、仕事も順調にいっており幸せに見える一方で、やはり他者に認められることへの執着も垣間見える。

 

リンドも同じような人生を歩んできたのがバーナムとの会話からよくわかる。いくら名声を浴びても満たされない ー Never enough は美しい曲だけど、リンドの満たされていない心を痛感させられる。

 

2人とも表面的に成功や幸せを手に入れたようには見えていたけど、心のどこかに隙間があり、バーナムは上流社会の人間に認められることでそれを埋めようとしていたし、リンドはバーナムという存在で埋めようとしていた。

境遇が似ていると言葉にせずとも惹かれあうところがあるのは分からなくもないから、一概にリンドの行いをジャッジ出来ないな…

 

  • 帰る場所がホーム、そこにいるのがファミリー

 

最後に残った疑問はバーナムとフリークスの関係。

バーナムはリンドの初公演時に彼らを目立たないよう立ち見席に通すけど、この時はかなりもうリンド(の公演)にのめりこんでいるのが分かる。完全にフリークスたち<リンド(自身の成功)。

そしてパーティー会場にも入れず完全にシャットアウト。ここからのThis is meはもう最高なんだけどさ……まさか、主人公に追い出されてこのシーンに繋がるとおもわないじゃん…

初見のときはこの事態に大変戸惑いバーナムに憤りも生まれ始めたんだけど、いざThis is me始まるともうそれどころじゃない。感動の渦で思考停止。少数派で生きてきた身としてはもう彼らの気持ち、あの曲でこれでもかと伝わってきて涙腺崩壊。シンプルなタイトルだけど全てが伝わるよね。英語のそういうところかっこよくてずるいな〜とよくおもう。

 

このあともリンドの公演しか頭にないバーナム。フリークスたちも自分たちを見ていないのにはとっくに気付いていてフィリップに苦言。

このあとも彼らに寄り添う様子あまり伺えないんだけど、火事のシーンで信頼を取り戻したと考えるしかないのかな。(個人的には足りないけど)

 

From Now On前のバーでのシーンの会話から読み取るに、サーカスという場は彼らにとってホームで、そこで出会ったみんながファミリーということになる。

そのどちらもバーナムがいなかったら生まれなかったのだから、感謝の気持ちはゼロにはならないよな〜。

「最初はお金儲けのためだったかもしれないけど…」ってセリフあったけど、最初だけじゃなくない…?と思った。

バーナムも資金の心配しかしてないし。みんな残ってくれてありがとうくらい言ってもええんとちゃう!?

まあいいんです。ホームとファミリーを創り出したのはバーナムなので。それは抜かりない事実。

 

  • 彼はGreatestだったのか?

 

ここまで色々な疑問があり、それに対しての考え方を述べてきたが、最終的に巡り巡ってこの疑問にぶち当たる。

 

彼がGreatestなのはやはりビジネスにおいてだよね。独創的なイマジネーションだけでなく、フリークスたちやフィリップを雇ったとこから見るにスカウティングの能力が高い。新たな趣向のサーカスも、欧州で人気の歌手を起用するのも、興行的に成功していたわけだからShowmanとしてはGreatestで間違いないのかもしれない。

私がこの映画を見終わったあとに感じたわだかまりは、人としてのGreatestを求めすぎてたからなのかなぁと。

GreatestなShowmanであってGreatestなmanではないのだから。

 

 

最後にね。ほぼ触れていないフィリップとアンもといザックとゼンデイヤだけどね。言葉には出来ないよ。2人がこの役を演じてくれて本当に嬉しい。この映画を観れて幸せだなとおもう理由のひとつ。